弁護士一問一答 【不動産・建築紛争問題】
不動産・建築紛争問題I 〜欠陥・瑕疵の責任追及ができる期間〜
【質問】 数年前に新築住宅を購入したのですが,壁や梁,屋根等の施工不具合が原因と思われる雨漏りが酷く,建築請負業者に損害賠償や修理等を請求したと考えています。責任追及ができる期間には制限があるということですが,具体的にはどのような期間制限があるのでしょうか?
【回答】通常,欠陥・瑕疵のある住宅等について損害賠償等を請求する場合,建築請負業者等に対して民法の「瑕疵担保責任」による責任を問うことになります。
瑕疵担保責任とは,建物等に瑕疵がある場合,建物を施工した請負人や建売住宅を販売した売主が,注文者や買主らに対し,瑕疵を補修したり,又は,修補費用相当額の損害賠償をなすべき責任のことです。
この瑕疵担保責任には,責任を追及できる期間に制限があります。 瑕疵担保期間は,民法上の原則では,木造建物は引渡しから5年間,石造やコンクリート造など堅固な建物では10年間となっていますが,実際の契約実務では,業者等との契約の際の特約や約款等で,「木造及び地盤の瑕疵は引渡しから1年間,鉄骨造・鉄筋コンクリート造等においては2年間」というように,かなり短い期間に短縮されてしまっていることが多いのです。
そうすると,引渡しから数年間経過してしまうと,その後に欠陥や瑕疵が発覚しても,損害賠償請求等ができなくなってしまうことになり,これでは注文者や買主の保護が十分とは言えません。
そこで,住宅の品質確保の促進等に関する法律(「品確法」といいます。)は,住宅新築工事に関して,@住宅の構造耐力上主要な部分又はA雨水の侵入を防止する部分の瑕疵については,瑕疵担保期間を引渡しから10年間として,住宅取得者の保護を図っています。
なお,@住宅の構造耐力上主要な部分とは,具体的には,木造では,基礎,壁,柱,土台,小屋組,斜材,床版,屋根版,横架材,鉄筋コンクリート造では,基礎,基礎ぐい,壁,床版,屋根版の各部分であり,A雨水の侵入を防止する部分とは,屋根の仕上げ・下地等,外壁の仕上げ・下地等の部分です。
欠陥・瑕疵ある住宅等に関する責任追及の手段としては,瑕疵担保責任の他に,不法行為責任による損害賠償請求も考えられます。
これは,建築基準法令等の違反や明らかな手抜き工事等の悪質な態様によって,住宅等に重大な欠陥を生じさせているようなケースについて,請負人や売主らに故意・過失による不法行為責任を追及しようというものです。
不法行為責任の期間制限は,「損害及び加害者を知った時から3年間」,「不法行為の時から20年間」となっていますから,ケースによっては,瑕疵担保責任の期間制限よりも長期間責任追及ができることになります。