弁護士一問一答 【不動産・建築紛争問題】
不動産問題E 〜土地の境界と時効取得〜
【質問】 長い間隣地との境界付近に塀を建てて住んでいたのですか、最近になって、地中から境界杭が出てきて、私の家の塀が隣地の土地上にはみ出して建っていたことが分かりました。やはり塀を撤去するしかないのでしょうか?
【回答】あなたは長期間にわたって塀を建てて居住していたということですから、この場合、境界付近の土地の時効取得を主張できる可能性があります。
土地を時効取得する要件は、@他人土地を20年間、所有の意思をもって平穏かつ公然に占有を継続した場合、A10年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有を継続し、自分に所有権があると信じ、かつそう信じることに過失がない場合です。
したがって、あなたが塀を建てて隣地の土地上にはみ出して土地を占有してきた経緯が、この@Aのいずれかの要件に当てはまるのであれば、はみ出した土地の部分を時効取得することができ、塀を撤去しなくてもよいことになります。
もっとも、時効は当事者がそれを援用するのでなければ効力を生じません。ですから、仮に取得時効が完成している場合でも、あえて時効を援用しないで土地を相手方に返すこともできます。
本件のような場合は、なんといっても「お隣同士」の問題ですから、たとえ取得時効が完成している場合でも、隣人との間で何の話し合いの機会ももたないままいきなり権利だけを主張したり、法的手続きに訴えたりするのは賢明とはいえません。
まずは、穏便に解決する方法がないものかどうか(場合によっては、廉価で土地を買い取るなどの協議ができるかもしれません。)、当事者同士できちんと話し合う機会を設けるべきでしょう。
なお、境界付近の土地の所有権を取得時効によって取得した場合、隣地との所有権の範囲と、いわゆる公法上の境界の位置が不一致となってしまう事態が起こり得ますが、これらを一致させるためには、適宜土地の分筆登記等の手続きを検討することが必要になります。
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