弁護士一問一答 【債権回収・裁判外業務】
債権回収・裁判外業務A 〜支払督促を利用する際の注意点〜
【質問】 支払督促のデメリットや利用の際に留意すべきことはありますか?
【回答】支払督促は、メリットばかりではなく当然にデメリットはありますし、債権回収にあたって通常の裁判手続きと支払督促手続きのどちらを選択すべきかについては、個々の
事案や状況に応じて慎重な検討が必要であると思います。
支払督促は形式的な書類審査のみで発せられますし、請求金額にも上限はなく、また、裁判所に納付する手数料(収入印紙)も通常の裁判の半分で済むなど、確かに、債権者にとって非常に便利な制度であるという面はあります。
ですが、事案や相手方の対応如何によっては、通常の訴訟を提起した場合よりもかえって手間や時間がかかってしまった・・・ということにもなりかねません。
特に、注意が必要な点は、「管轄裁判所」の問題です。債権回収について通常の裁判を提起する場合、実際に裁判を行う管轄裁判所は原告となる債権者の住所地にある裁判所となりますが、支払督促の管轄裁判所は「相手方の住所地」なのです。
そして、支払督促に対して相手方である債務者が「異議」を申し立てた場合には、当該事件は支払督促の申立てがあった裁判所(つまり相手方の住所地の管轄裁判所)に対して通常訴訟の申立てがあったものとみなされて普通の裁判手続きに移行してしまいます。
そうすると、例えば、債務者が遠隔地に住んでいたような場合、当初から直接通常の訴訟を提起していれば債権者は自分の住所地の裁判所で裁判ができていたのに、支払督促を経由して相手方から異議が出されてしまうと、遠く離れた相手方の住所地で民事裁判を闘っていかなければならなくなってしまう不都合が生じるのです。
遠隔地での裁判は、時間や費用の面で大きな負担となる可能性がありますから、これではせっかく簡易迅速な支払督促の手続きを利用した意味がなくなってしまいます。
ですから、支払督促は債権者にとって便利な制度ではあるのですが、実際の手続き選択にあたっては、事前に個々の事案や状況に応じた慎重な検討をすべきでしょう。
弁護士一問一答へもどる