弁護士一問一答 【債権回収・裁判外業務】
債権回収・裁判外業務C 〜売掛債権〜
【質問】 当社は,物品販売をしている会社です。当社の取引先に当社の商品を販売したのですが,一部商品について代金の支払いが延ばし延ばしになっており,もう未払いの状態が3年近くも続いています。何度か督促状は送っているのですが,お得意先でもあるので強硬に請求することもできず困っています。どうしたらいいでしょうか?
【回答】売買代金の支払いが3年近くもないということですから,貴社の売掛債権は消滅時効にかかっており,相手方が消滅時効の援用をすると売掛金の回収ができないことになります。
一般債権の消滅時効は10年,商事債権の消滅時効は5年なのですが,貴社の場合は「売掛債権」ですから,2年という短期の消滅時効にかかってしまうのです(民法173条)。
何度か督促状を送っているとのことですが,督促状等を送って催告をしても,催告から6か月以内に裁判上の請求等をしないと時効は中断しませんから,その間に2年間が経過してしまうと,時効中断の効力はありません。
もっとも,貴社の場合,全く打つ手がないという訳ではありません。
売掛先は主要な取引先であるとのことですので,他の取引との絡み等において,売掛先に未払いの売掛金債務を「債務承認」してもらえば,たとえ2年間の時効期間が経過して消滅時効が完成していても,相手方は時効の援用をして売掛債務の消滅を主張することができなくなります。
なお,債務承認をしてもらう場合,できれば,未払いの売掛債務について準消費貸借契約(簡単にいうと,貸金債務等の消費貸借以外の債務を,貸金債務等の消費貸借に変更する旨の契約です。)を締結してもらい,「売掛債務」を「貸金債務」の形に変更してもらっておくと良いでしょう。
商事の貸金債権の消滅時効期間は5年なので,売掛債権のままにしておくよりも,時効期間を延長する効果がある為です。
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