弁護士一問一答 【労働問題】
労働問題B 〜解雇について〜
【質問】 解雇には、解雇法理というものがあるということですが?
【回答】労働契約法16条は『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。』と規定していますが、これが解雇法理を条文化したものです。
解雇とは、使用者が雇用契約を一方的に解約することの意思表示で、期間の定めにない雇用契約(通常、正社員契約がこれに該当します。)については、従前は、民法に「各当事者は、いつでも(雇用契約の)解約の申し入れをすることができる・・・」と規定されているだけでした。
しかし、これでは、使用者側の都合による一方的な解雇により労働者の生活基盤が不当に脅かされてしまうことになりますので、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、解雇権の濫用として無効になる。」という判例が蓄積され、それが平成15年、平成19年の労働法改正によって条文化されるに至ったのです。
ただ、解雇法理の条文は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と抽象的にしか規定されていませんので、どのような場合に解雇権の濫用となるのかは、個々の事案ごとにこれまでの判例の集積等を参考にしながら個別に検討することになります。